(第6回)日本の無保険者
皆保険制度でも保険料の滞納は
もしも日本で国民健康保険の保険料を1年間滞納すると、保険証を返納せねばなりません。かわって「国保被保険者資格証明書」が発行されます。それで医療を受けると、窓口でかかった医療費をすべて自分で支払い、後日市町村に領収書を提出すると保険給付分が返還されることになります。1年半滞納が続けば、保険給付そのものが差し止めとなってしまいます。つまりせっかくの国民保険制度も、保険料を滞納すると取上げとなってしまうのです。
国民保険の滞納世帯数は、2001年には390万世帯(全体の17.8%)であったものが、2006年には481万世帯(全体の19%)に増えています。実質的に保険のない人も2000年には10万人程度だったのが、2007年には35万人に急増しています。つまりわが国でも無保険者が増えている、しかも増え方が近年、急増しているのです。アメリカの2割には遠く及びませんが、この調子で増え続ければ、2割になるのもそう遠い将来ではありません。
国の財政方針との関係
これは国の財政方針とも関係しています。国保の財源は、個人の支払保険料、県や市町村の負担金、それと国庫補助金によってまかなわれています。かつては国庫補助金で50%近くを占めていたのが、国の財政支出抑制によって、近年では30数%にまで落ちています。そのしわ寄せが、地方自治体と個人に及んでいることになります。つまり、国が出さなければ、地方自治体と個人が出す以外にないからです。かつてはうんと安かった国民保険の保険料が、国の財政方針の影響を受けて高くなっているのです。
国民健康保険加入者の半数が無職者に
又、国民健康保険にどんな人が加入しているかも影響しています。かつては個人事業者や農林水産業者が多数加入していました。今では半分以下になり、変わってかつては少なかった無職者が2倍以上になり、現在では半数以上が無職者です。自営業者が引退したり退職者が増えてその大半を占めるようになったためです。最近の不況では、企業をリストラされた退職者も増えています。景気が上向けば減るのでしょうけど、残念ながらまだ明るい見通しではないようです。景気が良くなり、政府の財政支出が緩やかになって、国民保険料が減らない限り、この状態は続くでしょう。
少子高齢化による医療費増と国家財政の方針
その一方で、医療に対する国民の需要は急増しています。少子高齢化を迎えたわが国では、病気になりづらい若者の数がへり、慢性疾患を抱えるお年寄りの数が増えています。当然、国民全体の医療費は増えていきます。戦後から高度成長期にはわが国は高い出生率を誇っていました。子供の数は増え、そのため国全体の教育費など子供にかかる費用はますます増加し、小中学校の建設や教員確保など、国家予算の中でも大きな割合を占めるのを認めていたのです。ある意味で、子供が増えれば教育にお金がかかるようになるのは当たり前だからです。今では時代は変わって、子供の数が少なくなり、教育にかかる費用が少なくなりました。都心部でも小中学校の統合や廃止が目立つようになりました。それと反対に医療費は増え続けています。健康な若者が減って、病気がちのお年寄りが増えてきたからです。ところが国は医療費抑制政策をとりつづけています。国民医療費がこのまま増えてしまえば国家財政にとって危機的な状況となるという理由からです。そこで何とかして医療費の増加を抑制しようと、様々な努力をしてきたのです。その結果、わが国の健康保険制度に軋みが生ずるようになってしまいました。
( 第7回へ続く )