健康保険についてみんなで考えよう!(シリーズ)
石川 義弘(横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学教授)
(第1回) 健康保険と火災保険、生命保険
健康保険も火災保険や生命保険と同じように保険という名前がついています。しかし健康保険とそれ以外の保険ではどこが違うのでしょうか。まず火災保険を例に考えて見ましょう。
火災保険との違い
自宅を購入する方の多くは、火災保険に入ります。火災にあう確立は少なくとも、万が一購入した自宅や家財道具が焼失すれば、住まいや生活に困り、再購入するには、新たな資金の用立てが大変なので、保険に加入し、経済的補償がもらえるようにしたのが火災保険です。その仕組を簡単に言えば、何万人、何十万人という加入者が保険料を払い、一人の保険料はわずかでも総額が大きくなります。それから火災時の補償金を払うのですが、火災にあう人は少ないので、補償金はまとまった額にできます。
医療保険も基本的には火災保険のようなものです。病気になったときに治療費用を負担してもらうためのものですね。では大きな違いは何でしょう?火災保険に加入しても、何年も、あるいは一生火災にあわない人が多いでしょう。一方、病気や怪我はどうでしょうか?皆さんや家族が一生のうち一度も、病気にも怪我にもあわないでしょうか。子供が熱を出したり、老人が肺炎を起こしたりする割合は、家が火事にある確率と比べてどれだけ高いでしょうか。つまり、火災保険は加入していてもめったに使うことは無いけど、健康保険はかなりの頻度で使うこと、これが一番大きな違いではないでしょうか。
それともうひとつ。もしも住んでいる家が建てて50年くらいの木造家屋だったら火災保険に入れるでしょうか。築50年では木造家屋の減価償却はとっくに過ぎていますから(つまり経済的価値がない)、火災保険に入るのは難しいかもしれません。一方、例えば90歳の人は平均余命を過ぎているからといって、健康保険に入れないということはあるでしょうか。これも大きな違いですね。
生命保険との違い
次に生命保険で考えて見ましょう。一家の大黒柱に万一何か起きた時や、不測の事態を考え、生命保険に入る方は多いと思います。日本では、生命保険会社は多数あり、どれに入るか探す時には、毎月の保険料は?入院補償とか障害者になってしまったときの補償は?等々質問があるでしょう。しかし、おそらく、補償が広範囲、高額の保険は月の保険料は高いでしょうし、入院補償や障害者補償等いろいろとオプションをつけると保険料は高くなっていくということです。負担できる金額を考え、どれを選択するか、生命保険ひとつ決めるのにずいぶん迷うものです。でももしもあなたが、生命保険(保険料)にはお金に糸目をつけないと思うなら、いろいろ保障する高額の生命保険を選べます。
それでは健康保険はどうでしょうか。病気になった時、どれだけ治療費を保証してほしいと思いますか?全部あるいは一部だけ?どんな治療でもカバーしてほしいと思いますか、たとえば若返り術や美容整形術まで?どんな病院や医者でも診てもらいたいと思いますか、たとえば外国の病院でも?そして保険料はどの位を払いたいと思いますか?
どこまで選択可能?
もしも日本の現行の健康保険が火災保険や生命保険と同じような保険なら、保険料や補償の内容まで様々な選択が用意されているはずです。皆さんの希望と必要に応じて、補償内容の高い保険か、補償の少ない最低限の保険かを選ぶことになるはずです。しかし、皆さん、たとえば会社へ入社する時、どんな健康保険に入りたいか、聞かれたり、希望を言ったことがありますか?どんな種類の健康保険に入りたいのか書類を出すよう言われた事はありますか?健康保険の給付内容を選んだり、自己負担が3割ではなく、全部ただになる健康保険に入りたいと言えるでしょうか?
アメリカ合衆国でしたらできます。そして、これらをすべて選ばなければなりません。でも日本に住んでいる方は、こんな事ありませんね。これがわが国の国民皆保険制度です。
( 第2回へ続く )
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(第2回)健康保険の特色
(第3回)アメリカの健康保険(医療保険)
(第4回)アメリカの健康保険(医療保険)の問題点
(第5回)日本の健康保険(医療保険)のしくみ
(第6回)日本の無保険者
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