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シンポジウム

小児救急の向かうべき道は?

開催期間:2007.09.26~2007.12.26

このテーマは終了しました。

シンポジウム「小児救急の向かうべき道は?」

学会  事務局

開催期間:2007.09.26~2007.12.26

小児救急の向かうべき道は?

「小児救急の向かうべき道は?」

 このシンポジウムではまず医療提供側の問題点を提示し、これに対する国民の意見を拝聴したい。次にはその意見を取りまとめ、それを新たなテーマとして議論を重ねたい。

 ここでの「小児救急」は、平成14年の日本医師会小児救急問題検討委員会の発表による「保護者が救急と感じたら全て救急である」の意味とした。わが国の救急医学における「救急」の定義は、結果として救急救命処置が必要となるような急性病態への対応であることから考えると、この「小児救急」の定義は“未経験な子育て不安にある”保護者に極めて優しい定義であり、「子育て支援」の側面を含んでいる。

1. 24時間365日の小児一次救急診療
 一次救急診療とは、ヒトが急病になって先ず受診する場合の医療行為である。小児では受診後の判断で90%以上が軽症とされている。平成14年度厚生労働科研衞藤班の調査では、時間外一次救急診療の受診行動が24時間365日化していることが示されている(図1:渡部他:日本小児科学会雑誌2006:110(5);696)。

時間外受診が日常(通常時間)診療と同様と考えられているように見えるし、むしろ「夜間は待ち時間が少ないから」とさえ公言する患者も居るほどであり、「コンビニ医療」と言われている。最近、首長選挙などで、子どもの医療費を負担なしにするという「子育て支援」を謳って当選することが少なくない。医療を何時いくら使っても「タダ」となれば、当然、時間外受診も増える。近年、小児科医の間でこの点に疑問を呈し、少なくとも時間外の医療助成は除外すべきではないかの意見が出始めている。この議論も国民を含めてなされるべきである。

2. 崩壊する二次救急医療と存在しない三次救急医療
 本来、救急は国が定めた休日夜間急病センター(診療所)で対応し(一次救急)、入院加療が必要と認めた場合には、より高度な入院設備のある医療施設に振り分ける(二次救急)。明らかに集中治療を要するような重症は三次施設(救命救急センター)へ受診することになっている(三次救急)。
 小児救急においては、休日夜間急病センターの診療時間が限られる、基本的診療設備に欠ける、非小児科医の診療もある、近年の国民の「専門医」志向などから、小児科医が当直している病院即ち二次施設に直接受診する例が増えている。
 わが国の小児科標榜の病院における平均勤務小児科医数は2.3人で、この人数で増え続ける「小児救急」に対応しなくてならない。(日本小児科学会調査:http://jpsmodel.umin.jp/)当然、過重労働となり離職が増え、小児科標榜の病院は減少の一途を辿っている。自殺すら発生していることは記憶に新しい。(http://homepage3.nifty.com/akira_ehara/karoshi_news.htm
小児救急の三次医療となると、実際には存在しないとさえ言える状況である。現状は、「成人」の救命救急センターが窓口で、病棟当直の小児科医が対応している場合が大多数である。また、三次対応を要する小児重症患者を管理する小児ICUベッド数は、全国で100床に満たない(桜井他:日本小児科学会雑誌2005;109(1):10-15)。

3. 日本小児科学会の提案
 日本小児科学会は、平成14年度から小児医療改革・救急プロジェクトチーム、更には平成16年から小児医療政策室を立ち上げて、小児医療救急および入院医療の集約化、地域医療の存続について提案してきた(図2)。その提案に沿って種々の全国調査を行っており、その結果は学会HPの「小児医療改革・救急プロジェクト」(http://jpsmodel.umin.jp/)で公開している。
 集約化には多くの大きな障壁があることが明確になっている。集約化に伴い「集約される」側の立場、既存の制度に恩恵を受けている国民の要望、自治体や経営母体のエゴ、医師個人の考え方、医療経済の構造的な欠陥、などが挙げられる。

4. 小児科医のQOLが改善しないと小児医療の継続は困難
 日本小児科学会では、市民の参加を得て毎年2~3回の「小児救急市民公開フォーラム」を開催してきた。その中で市民からは「あまり疲れている医師には診て欲しくない」との意見が述べられている。その一方で、日本小児科学会の小児科医のQOL調査で若手医師を中心に著しい疲労があることが報告されている。その結果、離職を考えるに至った医師が極めて多いこと、そして仕事の満足度が低いことが分かっている。(小児科勤務医ストレス調査2006)

 小児救急医療にとって病院小児科(医)が必須であり、その崩壊が全体の崩壊につながることは誰も否定しない。しかし、現状の病院勤務小児科医は、疲労が多く、仕事の満足度が低く、ちょっとしたきっかけで離職する状況であり、小児救急医療の危機にある。
その原因の大きなひとつに労働時間があげられる。今、卒後研修医の“労働時間”が週40時間となっているが、医師の労働時間には規定がない。今後は、医療の安全を確保する労働条件を探り、その条件下で医療提供体制は如何にあるべきかを総医師数も含め検討していく必要がある。

 以上、危機的な小児救急医療における医療提供側の現状を絞り込んで提示した。今後、継続的に質の担保された医療を幅広く提供するには、行政と医療者は何をなすべきか、そして国民はどのように行動するのか、医療資源が無限ではないことを大前提に、真摯に討論する必要がある。

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このテーマへの発言一覧

発言者名:

ChairmanThumb

1:小児救急の向かうべき道は?

学会 事務局   2007.07.31

参考資料
「小児救急の向かうべき道は?」基調発言

小児救急の向かうべき道は?

「小児救急の向かうべき道は?」

 このシンポジウムではまず医療提供側の問題点を提示し、これに対する国民の意見を拝聴したい。次にはその意見を取りまとめ、それを新たなテーマとして議論を重ねたい。

 ここでの「小児救急」は、平成14年の日本医師会小児救急問題検討委員会の発表による「保護者が救急と感じたら全て救急である」の意味とした。わが国の救急医学における「救急」の定義は、結果として救急救命処置が必要となるような急性病態への対応であることから考えると、この「小児救急」の定義は“未経験な子育て不安にある”保護者に極めて優しい定義であり、「子育て支援」の側面を含んでいる。

1. 24時間365日の小児一次救急診療
 一次救急診療とは、ヒトが急病になって先ず受診する場合の医療行為である。小児では受診後の判断で90%以上が軽症とされている。平成14年度厚生労働科研衞藤班の調査では、時間外一次救急診療の受診行動が24時間365日化していることが示されている(図1:渡部他:日本小児科学会雑誌2006:110(5);696)。

時間外受診が日常(通常時間)診療と同様と考えられているように見えるし、むしろ「夜間は待ち時間が少ないから」とさえ公言する患者も居るほどであり、「コンビニ医療」と言われている。最近、首長選挙などで、子どもの医療費を負担なしにするという「子育て支援」を謳って当選することが少なくない。医療を何時いくら使っても「タダ」となれば、当然、時間外受診も増える。近年、小児科医の間でこの点に疑問を呈し、少なくとも時間外の医療助成は除外すべきではないかの意見が出始めている。この議論も国民を含めてなされるべきである。

2. 崩壊する二次救急医療と存在しない三次救急医療
 本来、救急は国が定めた休日夜間急病センター(診療所)で対応し(一次救急)、入院加療が必要と認めた場合には、より高度な入院設備のある医療施設に振り分ける(二次救急)。明らかに集中治療を要するような重症は三次施設(救命救急センター)へ受診することになっている(三次救急)。
 小児救急においては、休日夜間急病センターの診療時間が限られる、基本的診療設備に欠ける、非小児科医の診療もある、近年の国民の「専門医」志向などから、小児科医が当直している病院即ち二次施設に直接受診する例が増えている。
 わが国の小児科標榜の病院における平均勤務小児科医数は2.3人で、この人数で増え続ける「小児救急」に対応しなくてならない。(日本小児科学会調査:http://jpsmodel.umin.jp/)当然、過重労働となり離職が増え、小児科標榜の病院は減少の一途を辿っている。自殺すら発生していることは記憶に新しい。(http://homepage3.nifty.com/akira_ehara/karoshi_news.htm
小児救急の三次医療となると、実際には存在しないとさえ言える状況である。現状は、「成人」の救命救急センターが窓口で、病棟当直の小児科医が対応している場合が大多数である。また、三次対応を要する小児重症患者を管理する小児ICUベッド数は、全国で100床に満たない(桜井他:日本小児科学会雑誌2005;109(1):10-15)。

3. 日本小児科学会の提案
 日本小児科学会は、平成14年度から小児医療改革・救急プロジェクトチーム、更には平成16年から小児医療政策室を立ち上げて、小児医療救急および入院医療の集約化、地域医療の存続について提案してきた(図2)。その提案に沿って種々の全国調査を行っており、その結果は学会HPの「小児医療改革・救急プロジェクト」(http://jpsmodel.umin.jp/)で公開している。
 集約化には多くの大きな障壁があることが明確になっている。集約化に伴い「集約される」側の立場、既存の制度に恩恵を受けている国民の要望、自治体や経営母体のエゴ、医師個人の考え方、医療経済の構造的な欠陥、などが挙げられる。

4. 小児科医のQOLが改善しないと小児医療の継続は困難
 日本小児科学会では、市民の参加を得て毎年2~3回の「小児救急市民公開フォーラム」を開催してきた。その中で市民からは「あまり疲れている医師には診て欲しくない」との意見が述べられている。その一方で、日本小児科学会の小児科医のQOL調査で若手医師を中心に著しい疲労があることが報告されている。その結果、離職を考えるに至った医師が極めて多いこと、そして仕事の満足度が低いことが分かっている。(小児科勤務医ストレス調査2006)

 小児救急医療にとって病院小児科(医)が必須であり、その崩壊が全体の崩壊につながることは誰も否定しない。しかし、現状の病院勤務小児科医は、疲労が多く、仕事の満足度が低く、ちょっとしたきっかけで離職する状況であり、小児救急医療の危機にある。
その原因の大きなひとつに労働時間があげられる。今、卒後研修医の“労働時間”が週40時間となっているが、医師の労働時間には規定がない。今後は、医療の安全を確保する労働条件を探り、その条件下で医療提供体制は如何にあるべきかを総医師数も含め検討していく必要がある。

 以上、危機的な小児救急医療における医療提供側の現状を絞り込んで提示した。今後、継続的に質の担保された医療を幅広く提供するには、行政と医療者は何をなすべきか、そして国民はどのように行動するのか、医療資源が無限ではないことを大前提に、真摯に討論する必要がある。

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3:患児の母親の理解をどう得たらいいのでしょうか?

シンポジスト 石川 義弘   [40代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(研究者、教育者)] 2007.08.07

患児の母親の理解をどう得たらいいのでしょうか?

小児救急が現在抱えている問題点は、5年後(あるいは来年?)の内科を含めた他科の問題点だと思います。

未経験な子育てが増加することにより、安易に医療機関への受診を行い、さらに受診コストが低ければその傾向はますます加速されることになると思います。

本来中核として機能すべき病院の小児科が、あまりの一次救急の集中により、2次ないし3次としての機能を果たせなくなり、医師の疲弊から来る医師数の減少が、病院の小児科機能を損なっています。

単純に考えれば、小児科医数を増やすか、あるいは患者の数を減らすかの選択しかありません。前者に関して言えば、地域センターに集約させるか、あるいは小児科医以外の一般医が小児の救急にも関与していく(医者の分母を増やす)ことが必要だと思います。これに関しては、小児科医のみならず、内科医を含めた他科の医師の理解も必要ですし、それ以上に、患者(特に母親)の理解が必要でしょう。

母親が小児科専門医に子供を見てもらいたがる気持ちはわかりますが、物理的には不可能であり、実際小児科専門医が診察する必要のある患児はさほど多くないと思います。

だとすると、もうひとつの大切なのは、母親の理解だと思います。それではどのように若い母親を啓蒙して言ったらいいのでしょうか。

皆様のお考えをお聞かせください。


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4:Re:母親の理解を得るためには・・・

シンポジスト 谷口 清州   [40代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(研究者、教育者)] 2007.08.15

Re:母親の理解を得るためには・・・

 母親の理解を得るためには、どうしたらよいかとのお話ですが、一部の例外を除けば、お母さん方は医師がきちんと説明さえすれば、ご理解頂けると思います。もちろんこれにはきちんと時間をかけて、今回のお子さんの状況、あとはどのように経過を看ていくか、また今後このようなことがあった場合にどうすべきかということを丁寧にお話しする必要がありますが、この丁寧に説明するということが、多くの患者が待合室にいる夜間救急外来の状況では、時間的な余裕や精神的な余裕のないことから、難しいのだろうと思います。以前にRisk Communicationの専門家とお話しした際にも、外来で丁寧な診療後の丁寧な説明が患者の行動パターンに与える影響が大きいと言われていました。
 ただ、こういった地道な活動は、多くのお母さん方のご理解とご協力を得るのにはかなり時間がかかるだろうと思います。米国などでは学会とか製薬会社とかがテレビでかなりいろんなPublic Relationを行って、メッセージを伝えていますが、このようなCommunication戦略を立てて行くことも必要だろうと思います。
 でも病院によっては、経過をみるという現実的な目的と夜間救急外来の限界を伝えるという戦略的な目的として、投薬は1日分にとどめて、必ず翌日の外来に来させるというようなPolicyをとっているところもありますね。
 ここらあたりは、十分な議論が必要なところでしょうね。

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5:「母親の理解を得るためには」について

主任座長 中澤 誠   [60代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.08.21

「母親の理解を得るためには」について

座長の発言です。
現在顕在化した小児救急、そして匿名1-5さんの発言のように将来他の領域にも共通する問題は、医療における需給バランスの崩れです。今この問題に対する真剣な議論は、近い将来の日本医療全体のあり方にとって極めて有用なものと確信します。
ここまで二人の議論が「受診側」への対応となっています。そこで、ここで幾つか、他の方々にもこの問題に絞った発言を求めます。
受診側の教育啓蒙はある程度効を奏します。時間内受診の保護者への「経過の予測」を含んだ丁寧な説明が時間外受診者を減らすことを経験されている開業医の話を聞きました。また、第一子より第二子の方が救急受診が少ないとの衞藤班の研究結果は、第一子でのレッスンが活きた結果と思われます。ただ、こどもの急病は突然未経験の保護者を襲います。ある意味でのリピーターは教育出来るとしても、「一元さん」へはどうしましょう。
教育啓発を個人向けと、制度によるものとに分けて議論する必要がありそうです。また、時間外受診数を減らす制度としての方策も考える必要はあります。ある会で、時間外で、一次医療機関からの紹介のない受診には特別診察料を徴収するとの議論がありました。受診抑制ではなく金銭を絡めたトリアージでしょうか。

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6:Re:「母親の理解を得るためには」について

シンポジスト 松裏 裕行    [40代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(研究者、教育者)] 2007.08.28

Re:「母親の理解を得るためには」について

まず確実な効果を期待する受診抑制策は金銭的トリアージをかけるしかないことは恐らく異論が殆どないと思われます。その場合、医療費助成制度(私の勤務地では15歳まで医療費が無料になります)の適応を変えなければなりません(=時間外は適応しない)が、政治的な要因で実現は極めて困難と思われます。一方、保護者への啓発活動は重要かつ必須であり継続的に行う必要があるものの、受診費用が無料で、かつマスコミ報道などで極端な症例や不安を煽る表現が続くかぎり(例:「高熱が出たらインフルエンザかもしれません。脳症を防ぐためにも直ちに小児科を受診してください」)、小児科医のQOLを改善するほどの受診数制限は期待できません。
 そもそも我々小児科医の本来の目標は我々のまともなQOLを維持することであり、少ない受診数を求めることではありません。患者数が減っても重症例が命を落としたり後遺症に悩むようなことがあれば後悔してもしきれません。まわりくどい表現になりましたが、以上を突き詰めていくと日本小児科学会が推進しようとしている「小児救急医療の重点化・効率化」が最も合理的な結論になると私は思います。すべての国民の自宅前に一次から三次救急医療を提供できる医療機関が設置できないことが明かである以上、地域小児科センターと中核病院に小児科医をはじめとする医療資源を重点的に配置し、地域開業医の出務という協力を得て、「地域全体で小児の命を守る」ことが唯一の方策のように私には思えます。当然、保護者の方々の理解と協力も「地域全体で・・」の概念に含まれるべき事項です。その実現には、世論をリードすべき主要マスコミ関係者の理解と協力が最も重要かつ有効と考えます。世論とマスコミ報道の後押しがあれば、議員さんも行政もより思い切った施策・法律立案が可能になるかと思います。

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7:「母親の理解を得るためには」について

主任座長 中澤 誠   [60代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.09.12

「母親の理解を得るためには」について

座長です。
以下の点でご意見を下さい。
1、夜間時間外診療に対して診療費を徴収するとすれば、どんな形になるか?そしてそれを国民に納得させる方策は如何にあるべきか?
2、時間内の受診患者のクリニックでの教育が、時間外の受診を減らすことが、個別的な経験から知られています。この推進には、時間内の診療が大勢の患者に追われている現状ではかなり無理があるとされています。この点に関する妙案はありませんか?こどもは全て小児科専門性が診るべきと言う主張が、ある意味、時間内診療の余裕の無さを生んでいると思えませんか?

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8:医療従事者と共に受療者も理解と協力および痛みを分かちあう姿勢が必要と思われます

シンポジスト 松裏 裕行    [50代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(研究者、教育者)] 2007.10.09

医療従事者と共に受療者も理解と協力および痛みを分かちあう姿勢が必要と思われます

 小生は24時間365日一次〜三次まで救急患者を受け入れる病院で20数年間勤務してきた小児科医です。そこでの経験から、もはや小児救急の24時間化、コンビニ化は時代の趨勢であり、幾ら小児科医が声高に叫ぼうと保護者への教育/啓発を熱心に押し進めようと状況は変わらないと信じています。特に悲劇的な結末を迎えてしまった小児例が大々的に報道され、親御さんが不安にかられる度に小児科医のQOLが低下し小児救急医療の悪循環が増幅していくようにさえ感じられます。この状況を改善するには不要不急の時間外受診を抑制すると共に、休日や深夜の時間外診療に携わる小児科医の負担を軽減することが必要です。
 不要な時間外診療の抑制策として即効性があり効果が確実なのは、座長も言及されている時間外受診に対する医療費助成の一部撤廃ないし制限でしょう。乳幼児医療制度により、医師の診療・検査・投薬が当然のごとく深夜に無料で受けられ、薬局で風邪薬を購入したり自宅で水道水(=有料!)を飲むよりも安価で手軽な日本の医療政策は多くの小児科医の犠牲のうえに成り立っていると言っても過言ではありません。通常診療時間帯を意図的に避けて来院する常習者や、深夜に勝手な要求を当然の権利かの如く大声で主張する一部の自己中心的な保護者が、小児科医のモチベーションをうち砕いているのは事実です。
 一方、肉体的にも精神的に疲弊しきった小児科医の負担を軽減するためには、日本小児科学会が提唱する医療資源の重点化/効率化が合理的な結論と小生は考えています。学会のモデル案が実現すると、自宅近くで小児科医が当直をしていた病院での救急診療を今までのようには受けられなくなる地域が少なくないかもしれません。当然地域住民は猛反対することでしょう。しかし日本中何処でも何時でも自宅のすぐ目の前で小児科専門医の高度かつ専門的な医療を受ける事が不可能なのは自明の理であり、崩壊する一方の小児救急診療を継続させ子供の貴い命を守るためには、保護者の理解と協力が必須といえます。
 こう考えながら自分の周囲を見回すと、救急を巡る諸問題は現在騒がれている産婦人科や小児科にとどまらず内科や外科系各診療科に共通であると思われ、小生の個人的経験ではとりわけ耳鼻咽喉科と眼科の時間外診療が深刻のようです。近い将来、全診療科の病院勤務医が雪崩のように救急医療から離れて行く日が訪れるように思えてなりません。そんな事態を防ぐには、何としても広く国民の理解と協力を得て医療従事者と共に受療者も今まで以上の痛み(=通院が不便、費用の自己負担が増えるなど)を分かち合う必要があると考えます。
 結局、今の日本の救急医療の問題点を解決できるか否かの要は、マスメディア(特にTVと新聞・雑誌の報道)であることに改めて気づかされました。

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9:時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

主任座長 中澤 誠   [60代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.10.31

時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

シンポジストの皆様
 時間外の小児科受診の適正化に関連して以下の二点について、賛否とそれに対するショートコメントを御発言下さい
1、時間外受診に限って、種々の医療補助金を廃止する
  a: 賛成  b: 無理(反対) c: この問いは時期早尚
2、今、小児科学会および国を挙げて推進している重点化において、一次時間外受診へのアクセス時間を「1時間まで」と設定しています。この適否と、下のbまたはcの場合にはコメントを御発言下さい。
  a: 適正  b:もっと長くても良い c: もっと短くすべき

会員の皆様
 1、皆様が参加できる「Topic:発熱したE子ちゃん」をご覧頂き、投票して下さい。
2、上のシンポジストへの問に、事務局を通して御意見をお寄せ下さい。

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10:Re:時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

シンポジスト 舟本 仁一    [50代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.10.31

Re:時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

時間外の小児科受診の適正化については、小児救急の危機が叫ばれ始めて以来、多くの議論がなされてきました。そのなかで有効な手段として有料化すなわち経済的障壁を一時的(いったん徴収し、医師が必要と認めたときに返還)という条件が考慮されるにせよ設定することも考えられました。確かにこうした費用の面で制限を設けることは、受診患者数減らしという意味で一定の効果はあるでしょう。もっとも1回の受診に10万円必要となれば受診される患者さんは皆無に等しくなりますが、1000円では効果は少ないと予想されますように、一つの問題点として料金設定をいくらにするかがあります。最終的にある金額が決定されたとしても不満は残りますし、その議論に時間を使うことは有益とも思えません。

今回の医療費助成の廃止もこの流れででてきたものでしょう。医療費助成の廃止は、経済的というよりも心理的効果を狙っているというご意見もあるかとは思いますが、実質的な影響を受けるのが医療費助成の恩恵を得て、かつそれにかなり依存している層であって高所得者や生活保護世帯などは影響を受けません。これでは効果が期待しにくいことのほかに、平等の原則からいいかがなものかという疑問があります。

しかし、より大きな問題はこうした経済的障壁により不要不急の受診のみが制限される訳ではなく必要な受診も抑制される可能性があることです。不要不急の受診は必ずしも経済的弱者のみあるいは強者のみにみられるものではないことは頭では理解されている方は多いのですが、小児救急に従事し、不要不急の受診に精神的肉体的に疲労困憊している小児科医には現状打破を訴えたい気持ちもあって止むにやまれず有料化を考えることになるのでしょう。でも経済的弱者が緊急性を要する状態のときに有料化が受診を控える動機付けになったとしたら、こどもの健康を守る立場にある私たち小児科医は社会に対してこの方法の正当性を主張し続けることができるでしょうか。

私たちは専門家として、経済的側面からではなく、医学的側面から不要不急の受診を減らす努力をすべきです。具体的には、少ない小児科医をはじめとする医療資源の集約化により受け入れ能力を向上させて原則的に全例を受け入れ、そしてトリアージ(緊急性の高い患者から診察していく)するというかたちです。遠方のためあまりに受診までの時間がかかりすぎると医学的、経済的に障害となってこどもに不利益をもたらすという視点は必要ですが(1時間というのは我が国の医療資源に鑑み妥当な設定と考えます)、現在の医療資源を考慮するとまず第一に選択すべき道と考えます。

どういった道を選択するにせよ、医療は社会の共有財産であり、そのひとつの領域である小児救急においてもその体制を維持発展させるために国民自らも協力する義務があると認識して行動することが最も重要です。その理解と協力なくしてはどのような制度を用いても成功することはないでしょう。その理解を得るために小児科医としてなすべきことは、受診前医療情報提供の充実(電話相談、日本小児科学会こどもの救急ホームページ、冊子など)、地域の事情に応じた小児救急体制の広報、トリアージシステムの必要性、有用性、限界などを説明し理解を得ること、こどもの健康全般の知識普及などです。

すべての国民が、適切な医療を受ける権利を有するとともに医療を守る義務もあることを認識するというのは夢物語なのでしょうか。

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13:Re:時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

シンポジスト 手島 秀剛   [40代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.11.05

Re:時間外受診の適正化についての一つの論点の提示

> 1、時間外受診に限って、種々の医療補助金を廃止する
>   a: 賛成  b: 無理(反対) c: この問いは時期早尚

b. です。が、現在多くの地域で行われているような現物給付ではなく、一時払い・出口払いにして後日申請後に保護者に支払われるようにすべきです。医療はタダではありません。受診者も正しいコスト感覚を身につけることはとても大切です。

> 2、今、小児科学会および国を挙げて推進している重点化において、一次時間外受診へのアクセス時間を「1時間まで」と設定しています。この適否と、下のbまたはcの場合にはコメントを御発言下さい。
>   a: 適正  b:もっと長くても良い c: もっと短くすべき

これに関しては地域の交通事情で大きく変わってきそうですが、主観的には a.と思います。

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14:小児医療資源が無限ではないことを知る。子どもを昼間によく診てもらおう。

シンポジスト 渡部 誠一   [50代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.12.11

小児医療資源が無限ではないことを知る。子どもを昼間によく診てもらおう。

日本の医療制度(国民皆保険,小児医療費無料化,フリーアクセス),日本の医師養成システム(志望科を自由に選べる)は,医療資源の無駄遣いと小児科医の減少をもたらした。これを国民は理解して,少ない小児医療資源を上手に使うことが望まれる。

 夜間・休日よりも平日の昼間の方が良い医療を受けられるので,仕事を休んで子どもを受診させることができる仕組みが必要である。少子化のために多くの女性が働くようになり,子どもを大切に育てたいので。


■根拠  
日本の医療制度は国民皆保険,小児医療費無料化,フリーアクセスで,子どもたちのためにとてもよくできているように見えますが,実は医療資源が無限であることが前提になった制度であると思います。現在の小児救急医療の危機は,この医療制度に従って,無駄遣いを重ねてきた結果です。小児科医を1-2名に分けて,コンビニのようにたくさんの病院小児科を作り,いつでもどこでも小児科にかかれるようにしてきました。便利になって,小児医療の恩恵を受けて,子どもたちの予後はとてもよくなりました。世界に誇れるレベルです。ところが,日本では必要な小児科医数の確保・育成を計画立てて行って来ませんでした。小児医療資源が無限ではないことを,子育てする親たちは知りません。認識しなくても生活ができ,子どもの診療を受けられましたので。最近小児科医が減り始めました。病院に勤める小児科勤務医が少なく,とくに地方での減少が著しいです。東京や大阪などの大都会に隣接する県では小児科医が都会へ吸収されるために特に深刻です。

 小児医療資源が無限ではないことを,小児科医,行政は親たちへ教えなければなりませんし,親たちも自ら知ろうとしなければなりません。

 24時間,いつでも,高レベルの医療を提供しようと医療者たち(医師,看護師,その他のコメデイカルなど)は努力しています。しかし生身の人間である限り,夜間の方が昼間よりもどうしてもレベルが下がります。手薄になります。子どもたちを良く診てもらいたいと思えば,昼間に受診した方が良い,休日ではなく平日に受診した方が良いのです。ところが仕事を休んで子どもを受診させることができません。なぜでしょう。親が子どもよりも仕事を優先しているか,職場が職員に対して子どものことよりも仕事を優先するように指導しているかのどちらかです。日本では少子化がどんどん進行しており,これから多くの女性が働くようになりますし,一方で少ない子どもたちを大切に育てたいという意識が更に強まります。したがって,子どもが病気になったら,仕事休んで平日の昼間に受診できるような,職場の全員が協力し合う体制が望まれます。

 これからは,小児科医が居る病院が減っていき,遠くまで行かないと子どもの診療を受けられなくなります。広い範囲から子どもが集まります。病院に来て受付した順番ではなく,病気が重い子どもたちから先に診るようになります。救急トリアージです。これを国民みんなが理解することが必要です。

 小児医療資源は無限ではないので,今までよりも効率のよい体制にしなければならないことと,資源を大事に使う方がよいこと,夜間・休日よりも平日昼間の方が良い医療を受けられることを,述べた。現在の医療制度は小児医療資源が無限ではないことに気付きにくい。そこを上手に伝えて欲しい。

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15:シンポジウムのまとめ

主任座長 中澤 誠   [60代/ 男性/ 医療関連(介護・福祉を含む), 医師(勤務医)] 2007.12.31

シンポジウムのまとめ

 このシンポジウムでの発言から、「小児救急の問題は」実は医療界全体の問題が浮き彫りにされていることが窺われた。

 医療は、入院医療が確たるものとして存在した上で、外来診療との密なる連携から成り立つ。国民が24時間365日と通して高度医療を望む中で、診療所がそれに応える外来機能が低下していないだろうか。国民は軽い疾患でも病院外来を受診し、本来、入院診療に力を注ぐ勤務医がその対応に追われている。日本小児科学会での調査は、小児科医療においてそのことを明示し、小児科勤務医の減少の一因と考察している。先に公表された厚生労働省の「平成18年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」においても、内科勤務の減少が明らかに示され、小児救急の問題は、わが国全て勤務医の問題であることがこのシンポジウムでの発言で裏付けられた。

 一つの「問題領域」の解決を図ることは、もはや何も解決しないことは明らかで、医療制度全体の改革が必要であるし、その中で、国民は与えられた医療資源を如何に永続的に存続させるのかを、医療に責任ある立場として考える必要がある。

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