
E子ちゃん、2 歳。若い夫婦にとって初めての子は、元気に成長しています。この夫婦は、これからのE子ちゃんのことを考えて、昨年、家を購入してA市に引越してきました。A市は人口5万の都市ですが、小児科の医師が少なくなってきている今、「小児科」を掲げる診療所が8つ、2人の小児科医が勤務する救急指定の市立病院があり比較的恵まれた医療環境です。また、車で30分ほどの距離にあるB市(人口13万人)には、小児科のある日本赤十字病院(小児科2人)と県立病院(小児科3人)があります。
昨年暮れ、「インフルエンザの治療薬であるタミフルを内服することによる異常行動」についてメディアが盛んにとりあげるなかで、A市でもインフルエンザが流行していました。そのころE子ちゃんが発熱したとき、近くの「N内科・小児科」を受診、風邪の診断で軽快しました。そのときにインフルエンザの予防接種を勧められましたが、副作用が心配で予防接種はしませんでした。

5月2日。いつも元気で動き回るE子ちゃんが、朝からだるそうにしてときおり咳をしています。体は熱っぽく、体温をみると37.6℃でした。連休前なので、近くにあるかかりつけの「N内科・小児科」に連れて行きました。
医師:「風邪のようですね。水分を多く摂らせて休ませてください。」
風邪薬を処方されて、帰宅しました。
明日からの旅行を楽しみにして、少し早めにお父さんが帰ってきました。食事のときのE子ちゃんは、やはりいつもより元気が無い様子。
おとうさん:「明日の旅行は無理かな。とにかく早くよくなってもらわないとな。」
少し残念そうにつぶやきました。
その後、E子ちゃんはなんとなくゴロゴロしているうちに寝てしまいました。しかしどうも、顔は赤く、ぐっすり寝ていない様子。夜10時頃、心配になったおかあさんが再び体温をみると、なんと38.8℃!
風邪?もしかしたらうわさのインフルエンザ?

そう考えたお母さんの脳裏に、2日前にE子ちゃんと買い物に行ったとき、レジで近くの人がマスクもしないで咳をしていた光景が浮かんできました。
不安になったお母さんは、昼間にかかった「N内科・小児科」に急いで電話をかけました。「本日の診療は終了いたしました。診療時間は平日の、、、」
録音された音声案内が流れてきました。
はじめてみるE子ちゃんの症状に、お母さんの心配はつのるばかり。とにかく診てもらおうと、転入のときにもらった広報紙で休日夜間診療所の電話番号を探しだし電話をかけました。

おかあさん:「うちの2歳の娘なんですが、今、38.8℃の熱があるんです。インフルエンザかどうか心配なんです。これから小児科の先生にみてもらえますか。」
休日夜間診療所スタッフ:「そうですか。こちらでは現在インフルエンザ診断キットを置いていないので、インフルエンザの確実な診断はできません。それと、今日の当番である内科医師が小児科をみています。よろしければいらして下さい。こちらは11時までなので、こられる場合には急いでくださいね。」

おとうさん:「内科の先生か~。インフルエンザかどうか判定も出来ないようだし、時間も30分しかないしなあ。そう言えば、会社でだれかが市民病院は救急指定だからいつでも診てくれると言ってたな。小児科もあるとか言ってたような、行ってみるか」
―― 市民病院救急外来へ
11時過ぎに病院の救急外来に到着、受付の男性に小児科受診を申し出ました。
受付:「この時間は救急対応となっていまして、小児科など診療科の指定は出来ないことになっています。」
おとうさん:「先生には診てもらえるのですか?」
受付:「はい、今日の当番の内科医師が診察します。その先生が必要と考えた場合には、待機している小児科医を呼ぶことができるようになっています。」

受付を終えて待合室へ。既に三人の患者さんが待っていました。15分たって、ようやく一人終りました。E子ちゃんはぐったり、身体はだんだん熱くなってきている様子で、渡された体温計は39.2℃を指しています。「まだですか?」一瞬みえた看護師に聞くと「もう少しお待ち下さい。」と言うが早いか、診察室の中へ消えていきました。
到着して45分後、「E子さん、診察室にお入り下さい」の声。診察室に入ると疲れた感じの医師が座っていました。

医師:「のどが赤くはれていて、風邪のようです。胸の音はきれいですので、肺炎の心配は今のところありませんね。熱さましと風邪薬をお出ししますので、自宅で安静にしてください。」
おかあさん:「昼間に近くの小児科にかかって風邪薬をもらいました。家に帰って飲ませたのですが。」
医師:「そうですか。でしたら今回は熱さましを入れて様子をみましょう。明日の朝になっても発熱が続くようでしたら、小児科の先生に診てもらったほうがよいでしょう」
おかあさん:「先生、今、小児科の先生に診て貰わなくて大丈夫ですか?」
医師:「風邪でしょう。それに今日待機している小児科の先生、昨晩の当直でしたし今日もさきほど帰られたようなので、きてもらうのは難しいですね。」
おかあさん:「えっ、昨晩当直した先生が今日も仕事をして待機もしてるんですか?こちらの小児科の先生2人と聞いてますが」
医師:「そうですね、小児科の先生に限らず、大半の医師は当直明けでも通常の仕事をしてますよ。それと、小児科のもう1人の先生は子育て中なので夜間待機はなしになっているんです。」

看護師に熱さましを入れてもらい診療は終わりました。会計で支払いをしようとしたところ、患者さんの自己負担はありませんとのこと。少し不思議に思いつつも「タダでありがたいよね。これだと心配なくいつでも連れてこれるね」と話しながら夜中1時頃、帰宅。E子ちゃんの熱は少し下がったようで、前より楽に見えました。