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開催内容

ワーク・ライフ・バランスのすすめ-女性の活躍支援として必要なこと:岩田 喜美枝・株式会社資生堂 代表取締役副社長

企業経営の立場から、女性の大変多い資生堂での事例をご紹介しながら、お話し、少しでも病院経営等に役立てば、と思います。

女性の活躍を3段階で示すと、“女性は子供ができたら退職が当たり前(約7割の女性が退職)“の第1段階。次が”子供ができても(かろうじて)仕事を続けられる“第2段階。資生堂は様々な対策を講じて、やっとこの段階です。けれども、これでは女性個人は不完全燃焼、会社も女性という人材を充分活用できていません。第3段階は、子供の有無や、男女に拘らず、キャリアアップをし続ける段階で、男性もあたりまえとして子育てを行います(スライド2)。

このステップの登るためには、ワーク・ライフ・バランスの取り組みが不可欠です。すなわち第1から2段階にうつる時は、子供が小さい時の育児休業、短時間勤務、事業所内託児施設等の充実による支援です。第2から3段階へは、長時間労働(夜9時、10時の残業は当たり前)に代表される男性社員の働き方の是正です。この是正なくして女性はキャリアアップ出来ず、男性は育児にかかわれません。

資生堂では90年頃から、仕事と育児の両立支援策として「育児休業制度」「育児時間:短時間勤務制度」を導入しております(スライド4)。今年は「1日2時間の勤務時間短縮の期間を、小学校就業前迄から小学3年生迄に拡大」他を実施しています(事例1)。また、店頭の美容職の人が夕方、お客様が多い時でも子供を保育所に迎えに行けるように、夕方から3,4時間働く契約社員美容職「カンガルースタッフ」を設けました(事例2)。短時間勤務をする美容職が703人、3.7倍に増加しました。さらに、「男性の育児休業」の取得を促進するため、2週間の短期育児休業を100%有給とし制度を利用しやすくしました(事例3)。ワーク・ライフ・バランスとは、企業経営からみますと「働き方の見直し」であり、これを実現すると、社員の生活の多様性化を通して、新しい価値創造が出来ることや、“業務改革”につながり、非常に有意義です。管理職階層の成果評価制度に“働き方の見直し”等の項目を追加し、ボーナス等に反映させています(事例4)。

医師をしております娘を通して医療現場をみてみますと、国家試験合格者の33%は女性、20歳台の産婦人科医師の7割、小児科医師の5割が女性という現状の中で、労働基準法からかけ離れた夜勤、当直、翌日勤務の仕組みにみられるような慢性的長時間労働の状態にあり、仕事と子育ての両立どころか、医療者の健康問題、医療ミスの発生懸念等、問題が深刻化してきています。国は今以上に強力な対策の実施、病院経営者側は経営の改善・工夫に積極的に取組んで欲しい、と願っています(スライド11)。

多様なキャリア(WLB)の実践が、
		女性の働き方だけでなく、男性の働き方も変える:脇坂 明・学習院大学 経済学部教授

ワーク・ライフ・バランス(WLB)施策とは、企業や組織において、従来型では通用しなくなった人材マネジメントを「仕事と生活の調和」の側面から見直す施策のことである。それは狭い意味の子育て支援を超えるもので、「働き方の多様性」を積極的に認めることが組織に利益をもたらす。働くものにとっても組織全体にとってもよいということで、「win-win」という好循環をもたらす可能性が大きい。

WLBのポイントは、1)一時点でなく生涯で考えるということ、2)多様性で、様々なキャリアをもった従業員がいたほうが、良い発想や創造性をもって仕事ができる、3)「win-win」の観点から、企業・組織のパフォーマンスの視点を持ち続けること、4)女性の活用、つまり男女均等とセットで考える視点が重要である(スライド4)。男女均等とファミリー・フレンドリー施策(従業員の家族に配慮した施策;以下、ファミフレ)がセットでないと業績が上がらない。

第三、第四の観点から、筆者の研究では「win-win」は、わが国でもみられる。なぜWLBやファミフレを進めると、企業業績が高まるのか。それは、人材確保などを通じて組織の価値を向上させる。誰もが利用できる休業や短時間勤務の普及により、仕事の分担や内容を見直すことによって、コスト削減や生産性の向上につながる。

 これらは、最初は女性従業員が中心だが、男性の働き方もかえ、とくに育児休業を取得したり、まわりに取得した人のいる男性は、時間効率の意識などが高くなり、子育てにも熱心になり、仕事にもやりがいを感じている(スライド19)。

 多様な働き方のなかで、短時間正社員が重要である。現在フルタイムのものが一時的に短時間正社員となったり、現在パートタイム社員のなかで、短時間正社員に登用されたりするものである(スライド20)。

医療コーディネーションによって変えられること:嵯峨崎 泰子・日本医療コーディネーター協会 理事長・看護師

医療コーディネーターは、医療提供者と患者の間にたち、当事者の立場にたった意思決定支援を行っています。

具体的な支援の内容は二つあり、一つは疾患をもった方が適切な医療を納得して受けられるような支援。もう一つは疾患による生活障害を最小限にすることです。生活障害の支援のうち、特に経済的負担の軽減を視野にいれた支援は大切です。今までコーディネートしたケースをみると疾患と付き合っていくうちに、医療者側に、経済的配慮がないために、当事者の生活が追い詰められていく状況がたくさんありました。治療をうける、疾患をもって生きていく場合、何にどのようにお金をつかっていくのか、その判断は大切です。

こういった支援は、実は患者のワークライフバランスを考えることでもあります。ワークライフバランスとは、自分の人生をどのように構築していくのか、それを考えることだからです。もちろん、病気になってからワークライフバランスを考えるのではなく、普段の生活の中で、健康の維持・増進、自己実現について考え、その中でワークライフバランスがとれるようにしておくことが大切です。最近は、健康な方でも自分にあったワークライフバランスを考えることが難しい社会状況です。

今後は、患者のワークライフバランスに対する支援だけでなく、疾患の予防の観点から、健康な方のワークライフバランスへの働きかけも行っていきたいと考えています。

女性医師のワーク・ライフ・バランスの現状-:荒木葉子・日本女医会女性医師支援委員会委員長 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長

ワーク・ライフ・バランスは、男女雇用機会均等とワーク・ファミリー・バランスの両者を包括し、かつ自己啓発や趣味など仕事以外の領域を増やすことや地域活動への参加、健康的に働くことを含む概念であるが、医療機関において施策がとられている施設は少ない。

その理由には、皆保険制度を含めたわが国の医療の特殊性が挙げられる。なかでも、女性医師に関しては、配偶者が過重労働を強いられる医師が多く援助を得にくい、非常勤でもある程度の報酬を得られる、再教育および就職が困難であるなどのさらなる特殊性が挙げられる。結果として女性医師は、医学部の閉鎖性、過重労働、努力と報酬の不均衡などの医療問題によるゆがみを強く受け、ワーク・ライフ・バランスを考えるより諦めや明らかなライフ重視の姿勢がある。

 本来、女性医師は勤勉でコミュニケーション力に優れ、高い臨床・研究能力、リーダーシップを示す。厳しい競争を潜り抜け、多額の費用により育成された女性医師が、志半ばで離職あるいは不本意な働き方をすることは、個人そして社会にとり損失が大きいといえる。

女性医師の問題は、病院内の育児、育児休業、当直免除などに止まらず、評価方法を含む医療システム、財政、労働時間、多様なキャリアに対する支援、一般に対する医療健康の教育など様々な医療問題を含めた視点で、医師のプロフェッショナルワーク・ライフ・バランスの問題として幅広い論議が必要である。

女性医師がワーク・ライフ・バランスを確立し病院でいきいき働けることは、日本の医学・医療が再生する指標であろうと思われる。

女性介護職のキャリアとワークライフバランス-:内田 千惠子・社団法人日本介護福祉士会 副会長

介護職は平成17年度で328万人いますが、女性はその8割を占めています。介護職の4割は非常勤(訪問介護では8割が非常勤)として働いており、とくに訪問介護では登録型といわれる不安定な状況で働いている人が多数を占めます(スライド1)。非常勤という働き方を選んでいる人もいるでしょうが、常勤採用の枠がないのでやむなくという人が多いと考えられます。介護福祉士資格を取得している人は現在72万人いますが、介護の仕事に就いていない人々はかなりいます。

介護という仕事は世間では3Kなどと言われているようですが、介護職の年収も200万円代から300万円代の人々が多く、収入面での評価も低いものになっています。介護職の離職率は高くなっており、収入が低いことも原因の一つです(スライド2)。現在、介護人材の不足が叫ばれ、このままでは介護現場は崩壊するのではないかと危惧されています。女性に向く仕事といわれながら妊娠や出産・育児で辞めざるを得ない職場環境があります(スライド3)。また、介護職は教育や経験によって、知識や技術に差があります。しかし、キャリアアップを望んでも忙しすぎて十分な研修や教育が受けられず辞めている介護職もいます。

女性が介護を一生の仕事として働くためには、安定した短時間労働、キャリアアップの体系・体制の確立、妊娠しても働ける職場環境や子育てのための環境整備など解決しなければならない問題が山積しています(スライド4)。社団法人日本介護福祉士会でもキャリアアップの体系作りなどをしておりますが、国全体で考えていただきたいと思います。

介護のある生活の中で楽しく生きる-:介護のある生活の中で楽しく生きる

 介護の現場は一つとして同じケースがないだろう。だからこそ、それぞれの人が自分の体験を語り合いその中から何かを学び取るのだろうか。

 主人が倒れて30年、何と長い歳月が流れている。自営業の継続と、中1・小2の息子の教育に無我夢中で働き続けた前半・再発で、体の自由を失い、失語症となってからの後半、夫は、今、満80歳を過ぎ私と二人の息子と共に暮らしている。

在宅介護をこんなに長く続けられるのは、訪問診療の先生・看護師さん、入浴介助のスタッフ、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん達との温かい触れ合いがありお力をお借りし常に体調管理が行き届いていることにある。一方私自身、息子達の理解のもと、ゴルフにも俳句にも楽しく過ごせる時間を貰っているからだろう。介護する者の心が幸せでなければ、優しい気持ちになれないことを実感している。

二人の息子も、どんなに遅く帰っても、お父さんに声をかけ、元気で過ごせたことを喜び合う。主人も大切にされていることを味わうひと時であろう。

明るい会話や、笑顔が生きる力をお互いに感じ得る何よりも介護の生活に大切なことと私は思う。