
講演資料
女性にとって出産の安心とは何でしょうか。私が出産・育児サイト「ベビカム」と共同で行った調査では、日本の母親たちは非常に近距離指向で通院時間が30分を越えると途中で生まれるという不安が急増しました。
まして高齢出産の方、難産歴のある方たちは不安です。「産まないでほしい、と言われているよう」と悲痛な声も聞こえてきます。また、通院時間が1時間を越える人が多い岩手県遠野市の女性は、普通のお産なら大丈夫だろう、としながら「せめて、緊急時に受け入れてくれる所がほしい」と切実なコメントを寄せてくれました。出産施設が遠いと、異常事態を早期に発見するチャンスを逃す可能性もあります。こうしたリスクに対応策を打ち出せない限り、女性から集約化への賛成をとりつけるのは難しいと思います。
対応策のひとつをご紹介しましょう。現在、遠野市には市営の助産院が開設されていて、市の助産師さんは市内の妊婦をすべて把握しています。妊婦健診を行うほか、吹雪の夜に陣痛が起きれば産婦さんの家に出向いたり、入院に同行したりします。都市に高度医療の施設がそびえることも大切ですが、助産師によるこうした基本的なサポートこそ産科医療の土台なのだと私は遠野で痛感しました。
集約化に女性が抵抗を感じるもうひとつの理由は、強い信頼関係がある既存の出産施設を失う「喪失感」です。長野県上田市産院の存続を求めた署名運動に参加した女性たちは、上田市産院に本能的な安心できる「巣」を見いだしていたのです。そして巣の本質とは何かというと、そこに勤務する助産師さんとの精神的なつながりでした。上田市産院は助産師さんが一生懸命関わる産院だったのです。
女性には、医療があることを理性で理解する父性的安心と、肌で感じる母性的な安心が必要です。後者がはぐくまれるには、助産師外来、院内助産院のような時間とスキンシップが必要です。集約化は時代の必然かもしれませんが、女性の視点を持った集約化であってほしいと思います。(スライド1,スライド2,スライド3)