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シンポジウム:がん終末期の医療体制を考える

開催の様子

安心できるお産を目指して?産科医療に何が不足しているのか?

第一部では、医師、助産師、ジャーナリスト、妊婦それぞれの立場から、現在の産科医療とその問題についてご講演頂きました。総合討論では、会場の皆様からのご意見、ご質問をもとに「安心できるお産」を具体的に考え、問題解決に向けて議論しました。

出産を助け相談できるコーディネーターがほしい

中林(座長)会場の皆様からの多くの質問に、シンポジストにお答え頂き進めていきたいと思います。

「集約化は社会として必要と思うが、今日本に必要なのは、妊婦さんの不安を減らすコーディネーターではないか。復帰した助産師、現役から退いた方々にその役割をお願いすることはできないか」「河合さんのお話のようにお産で大変な思いをしている声を社会に伝え、上手にお産をする手助けをする人がほしい。」というご意見について、皆様のご意見をお聞かせ下さい。

遠藤ご意見の通りだと本当に思います。集約化したら病院まで30分以上かかるので、その時間をつなぐのも助産師の役割と思います。市町村に診療所がない場合、助産師が家庭訪問で相談にのり、かかりつけの助産師、医師と連携するなど集約化に対する助産師の有効活用を、市町村レベルで取り組んでいけたら良いと思います。

中林(座長)助産師が、病院や助産所だけではなくコーディネーターとして社会に出て行く必要があるということですね。

海野健診施設と分娩施設の関係が、問題ですね。分娩施設はだんだん少なくなる現実があり、それに対応する健診施設をどうするか。やはり、専門職がきちんと対応管理して、妊産婦さんをサポートする体制を、それぞれの地域で作ることが重要です。

なぜ産科医が少なくなったのか

中林(座長)「なぜ産科がこのようになったのか、産科医が時代の変化を見誤ったのではないか」とご指摘がありました。

私の世代は、「医者は昼夜なく働くのが当たり前」と言われて働いていました。しかし、気づくと後に続く人がいなくなってしまった。人の背中をみて産科医になる人がいない時代なのです。時代に沿った新たなシステムを、私たちの世代が作らなかったのが大きな問題ですね。

河合後ろに続く者がいないことは、産科医だけではなく、あらゆる職種に起きている現象だと思います。新書「若者はなぜ3年で辞めるのか?」が大変なベストセラーとなったことが示すように、若者が納得できる職場は今、たぶんとても少ないんです。ただ産科医療は、さまざまな条件が重なったために、その中でもきわだってしまったんですね。

中澤(座長)医師不足は私の属する小児科に端を発した問題といっても過言ではないでしょう。小児科勤務医約60人に対して「あなたのお子さんを小児科医にしますか」とアンケートしたところ、「はい」と答えた人はゼロでした。結果、小児科医は絶滅危惧種になっていますが、産科も同様ではないか。海野先生が言われたように、勤務医と診療所の先生方に、仕事内容と経済的、社会的評価のアンバランスが生じているためと考えています。
同じ問題が外科にも内科にも起こっており、医療全体の問題です。特に明らかなのが産科、小児科と思います。

中林(座長)私どもも同じような質問を産婦人科医にしたところ、「産科医だけにはなってくれるな」と、医学部のお子さんに頼んだ人が圧倒的多数でした。それから「訴訟で医師の一生が狂ってしまうことがあり、訴訟の増加は医師引きあげのひとつの理由です。実際、福島県ではひとり医長が全員引き上げてしまいました。」訴訟は大変大きな問題ですね。

海野医療は、絶対にうまくいくとは限らず、また医者が良かれと考えたことが、違う結果となることもあります。結果として、患者さん側からは納得できないことがたくさん起こります。私自身は、医療に限界がある以上、納得できない結果が生じること自体は仕方ないと考えています。
今、この問題を解決するしくみが、民事訴訟や警察に訴えるという非常に大雑把なしくみしかないことが、医療全体の問題です。当事者同士がきちんと話し合い、問題を突き詰め、どうするか考えるしくみがないため、問題がこじれた事例はたくさんあります。ただ難点は、時間と手間がかかる。今、余裕のない医療現場で、それをやらなければならないので、やはりヒト、モノが必要なのです。

中林(座長)分娩をする方々から少しずつお金を集めて、医療訴訟に対する基金とする運動が実現しつつあります。一つの解決策と思います。

状況に応じて、お産する場所を選ぶことが大事

中澤(座長)水野さんの助産師さん達の対応や施設の雰囲気が信頼・安心につながるとのお話、とても大切なことと感じました。助産師の関わりを含めて現場あるいはシステムを見直す必要があると思います。

水野徳島奥地の状況をみると、都会とは違うと感じます。東京での出産は、ある種のイベントと感じます。選択肢が増えているので、待ち時間などで病院に文句を言う前に、自分の意識、方向を変えていくことも必要と思います。また、出産は個人ではなく家族で取り組むところが多いので、誰かがマイナスのことを言い始めるとマイナスが広がります。家族がお産への意識を高めて、病院にかかるとともに、良いアドバイスを出せるような環境を作ることが大切だと思います。

中林(座長)小規模、大規模施設の分娩それぞれに良いところがありますが、国民はどちらを選択するのでしょう。身近で親しみやすい小規模な診療所と、水野さんのようにNICUのある大規模病院でのお産は、今のところ半々くらいですが、実際の希望はいかがでしょうか。

水野女性は産科だけでなく婦人科でもお世話になるので、長くお付き合いでき信頼のおける先生がいて、かつ、お産のリスク評価が低ければ、小規模施設でお世話になるのもいいと思います。ただ残念なことに、最近は東京の分娩施設も減っていますよね。

中林(座長)お産では、上手に施設を使い分けていくことが必要ということですね。しかし東京では、お産を扱う診療所がなくなっている。これには、いくつかの診療所が一緒になって分娩が出来るシステムが必要と思いますが、いかがでしょうか、海野先生。

海野小さな施設の弱点をどのように補うか問題ですが、診療所は基本的にベテランの先生がおり安心感はあります。また、病院で働く若い先生のキャリアプランにとって、目標となる診療所などの小規模施設で分娩を行う先生がいることは大事なことと思います。実際には病院の仕事がどんどんきつくなっているため、小規模施設と大規模施設の助け合いが必要です。私自身は、患者さんが診療所を選ぶ方法と、診療所の先生が病院でも診療をする二つの方法があると思います。より密接な連携によりコミュニケーションが良くなり、病院で働く先生の負担感、圧迫感が解消されると思います。

医療について情報発信はどうすればいいか?

中林(座長)「オープンシステムはよいと思うが、意外と知らない人が多い。もう少し知っていただきたい」「市民に向かって、医療者側から希望することをもう少し発信したらどうか」と意見があります。河合さんどうでしょうか。

河合そうですね。専門家から一般にはなかなか伝わらないのですが、オウムのようにひたすらひとつのメッセージを繰り返してやっと伝わることと思います。
一般に知らせる戦略のひとつは、分かり易いネーミングをつけることです。オープンシステムという名前は分かりにくいですが、一方で漢字が沢山並んでいても受け入れにくい。本を作る時はタイトル勝負といわれるように、新しいシステムを作る時は直感的に分かるネーミングが重要です。また、一般への広報は、プロの広告会社を活用するのも方法です。

中林(座長)広報について、学会の活動はどうですか。

海野小児科学会が積極的に行っており、学ばせてもらっています。産婦人科学会のホームページは、全部の情報を開示する姿勢ですごく進歩したと思います。一般の方々に実情を理解いただき、その上で一緒に解決法を見つけることが学会の基本方針であり、今後も進めていきます。ただ、学会にお金が無い。

中澤(座長)先行していると言われました小児科学会も、非常に苦労しています。一つの事件が取り上げられて、これまで積上げてきたものが一夜にして崩れ去ることがしばしばありました。使ってきた方法は、ホームページでの公開と、優秀な新聞記者のブリーフィングです。繰り返し関連する記事を作ってもらい、ずいぶん理解を得ました。報道陣を通して新聞に載せてもらうことも必要です。また、小児科学会は年に3,4回公開シンポジウムを全国で行っています。とにかく、この現状を理解してもらわないと先に進まない。

これからの助産師はどうする?

中林(座長)「助産師の役割が国民、とくに最近の世代に広く理解されているか」「助産師国家試験、研修するシステムなどを変えないと問題が解決しないのではないか」とご意見を頂いております。

遠藤「助産師っていたの」「助産師ってお婆さんじゃないの」「20代の助産師さんもいるんだ」と言われます。助産師は現在約2万5千いて、毎年1600人卒業しています。名前だけでなく内容も知ってもらうために、メディアは非常に大事と思います。助産師になるには、看護系大学か、看護師教育に加え1年間の専門教育が必要です。96校の大学、33校の助産師学校がありますが、1校あたりの養成数が少ない。今後、養成数を増やすために、実習では妊産婦さんにもご協力を頂きたいと思っています。また助産師のキャリアの認定、研修については、人間性に関わる部分も多く検討を重ねているところです。

中林(座長)「助産師として活躍が期待されていることが分かり、是非頑張りたい」との意見がある一方で、助産師が足りない状況で看護師が内診をしていた問題で産科が閉院した事実があります。今後、助産師の仕事は増えるので、医師・助産師の指導のもとでほかの医療関係者がある程度のことが出来るシステムに変えていく必要があると思います。内診は医師、助産師、看護師それぞれ診るところは違うけれども、トレーニングを受けて一定の資格を与えて行ってもらうしくみを考えていく必要があると考えますが、海野先生どうですか?

海野今、産科医も助産師も足りない状況で、細かい線引きは発展的ではなく、将来の在り方を含めて前向きに考えるべきです。地域に密着した現場の先生方の考え、行動は尊重されるべきと思います。

中林(座長)確かに、人不足の現状で細かい職種ごとの取り決めはあまり必要ないので、これは考えていくべきと思います。

助産師の教育レベルについて「若い助産師の分娩に対する能力が少し落ちてきているのではないか」と質問がありました。取り扱う分娩数で言えば、年間数百件の昔の助産師に比べ、最近の助産師は年間20-30件。今後のあり方も含めて遠藤先生いかがでしょうか。

遠藤実地で経験しないと身につかない能力・技術は、免許を取得したあと繰り返して上手になるしかないと、助産師外来で実感しております。もちろん基礎教育の段階で、アセスメント能力を含めて知識レベルで徹底的に学ぶ必要があります。現在、外来を行っている助産師は5年で約300件のお産を経験しています。そのくらいになると皆様のニーズに応えてお世話が出来るという研究結果がありますので、ぜひ皆様と一緒に成長させて頂きたいと願っています。

中林日本看護協会では、5年間で取り扱い分娩数100-300例のように一定の経験をした人を「エキスパート助産師」などの名称で認定する方向で動いているところです。「助産師外来はとても良いと思いますが、おいくらですか」との質問ですが、これは自費診療なので地域や施設によって異なりますが、だいたい1回4千円から5千円ぐらいです。

女性の産科医が増えていることへの対策は?

中林(座長)産科医療に従事している医師に女性が増えつつあることに対しての取り組みはどうなっているのでしょうか。

海野病院で働く女性医師の労働環境はきわめて悪いです。男女関係なく、超過勤務はほとんどつかず、何時間働いているか本人も分からずにずっと働いています。
私の大学で、女性の産婦人科医が妊娠し産休をとろうとしたところ、産休の前例はありましたが育児休暇の前例がなかったので、大学や病院の規則を変えてもらいました。そのくらい環境が整っていない。育児休暇中に代わりの先生を雇うのは非常に難しく、子育てを機に退職される先生が非常に多い。また一方で、代わりの先生がいなくても女性医師が産休・育児休暇をとり、同じ仕事量を少ない人数で続けている現場もあります。小児科も同じ状況ではないかと思います。

医師当直バイト、無痛分娩など

中林(座長)若い医師から「勤務病院の給料だけではやっていけないので、他院の当直バイトをしています。二つ三つの病院で当直をして、母児双方の命を守るのは大変です。バイトをしなければいけない状態は改善しますか」と質問があります。

海野特に大学病院は給料が他と比べてかなり安く、他院のバイトをする状況は確かだと思います。逆に、都内の大きな病院では医師が足りておらず、当直を外部にお願いしてなんとか体制を維持しています。このような厳しい勤務状況について、実際のところが世の中に伝わっていないのは事実です。産婦人科に限らずお金に関しては、それぞれの病院で努力していただく方向になると思います。ただ、収入が増えたので他の病院のバイトをやめると、そちらの医療体制が壊れます。バランスで成り立っているのが現実です。東京都内の大きな病院でお産するときでも、すごく疲れた先生が夜中に診察することがあるかもしれません。

中林(座長)この発言から、医療の実態が垣間みえますね。ほかに「日本では無痛分娩があまり行われていないようですが」と意見があります。フランスでは持続硬膜外による無痛分娩が95%行われており、日本でも徐々に増えつつあります。しかし、妊婦さんたちの要望に応えるほど無痛分娩が可能な施設は多くなく、その原因に麻酔科医不足の問題があげられます。

水野さんへ「妊娠中、子育ての時期、どのように家事をのりきり、ご主人の協力を得たのでしょうか」と質問があります。

水野夫は多くを求めない人間だったので非常に楽でした。優先すべきは何かをきちんと決めることです。妊婦さんご本人と子供の健康が一番で、次は家庭ごとに違うと思いますが、うちは栄養で、食を大切にしました。この二つがしっかり出来たので、ベビーフードに頼らず、夫は構わず、大変な妊婦・出産を乗り越えられました。子供が出来た時点で、旦那さんには一番ではないことを自覚してもらう必要があると思います。

中林(座長)フロアからご意見はありますか?

フロア発言1今の産科医療には二つの大きな問題があると思います。一つ目は女性医師。女性医師だけの問題ではなく、女性が子供を産み育てながら社会進出できるよう社会を変える必要があります。具体的にフレックスタイム、ワークシェアリングなどです。
二つ目は、医療体制です。例えば、世田谷区では3つの病院と8つの開業医が分娩を扱っており年間約4000が至適数です。しかし、実際は約7000の分娩を扱っており、産科も新生児科も人であふれています。自分の病院では年間1600件以上はできず、残念ながらかなりの数をお断りしています。内診の問題もあり一次体制としての診療所が激減、二次病院の医師数も減少しています。その分、すべて三次病院が引き受けているため、緊急時に妊産婦を受け入れる余裕がありません。自分の病院では1週間で約20件の緊急の母体搬送を断っています。この状況では、病院を選ぶことはできません。産科医と助産師と看護師による新しい医療体制を作って、一次、二次医療体制を回復させないと日本の医療は潰れると思います。

中林(座長)基幹病院(三次病院)が、救急母体搬送をいつでも受け入れられる体制になければ、つまり空きベッドを用意しておかなければ、安心してお産が出来ないということですね。三次病院が正常の妊産婦でいっぱいでは困るので、国民が上手にそれを使い分ける。そして、開業の先生が分娩を扱い二次病院の役割を担う体制をつくる。そのための医療に関する情報を伝えていく。今日のシンポジウムでのお話を別の側面からお話し頂いたと思います。

フロア発言2私は昔の産婆です。安心できるお産を目指してというタイトルなのに、先生方の給料とか大変とか、そういうお話があまりに多いのでちょっと失望しました。82歳でまだ月に2,3回は仕事をしております。分娩も大事ですが、フォローが大事ですね。いろんな経験をもとに、あの家はお米がなさそうだから持って行ってあげようとか、いろいろなことをしたのが産婆でした。
私の勤める病院は足立区にあり、患者の半分が外人で、あと半分はお金の払えない生活保護を受けて助産費用をもらう方。妊産婦は、予定日当日や、10日前でいきなり痛くなり受診に来るのです。それを来た瞬間に言葉遣いや態度からどのように話をすれば通じるのか考えてお産を助けます。お産の痛みは、妊婦さんが優しいと思う助産婦と、怖いと思う助産婦で違ってきますので、自分が産んだ経験を活かして患者の立場になれる助産師が大事です。
私が先生に気に入られている理由は、患者さんのおもりがとてもうまいからだそうです。私は、昭和23年に産婆の資格を取り、その後、皇居の中の婦人警官や幼稚園の先生をしていました。そして45歳から助産婦なりました。別の道を歩んだ経験が、役に立っていると思います。
お産は本当に大事ですから、助産婦が正常産をうまく扱えるように教育して、いざ困った時に先生が助けるようにしたらずいぶん変わると思います。

中林(座長)ありがとうございます。未受診の妊婦さんの飛び込みの問題を含めて、恵まれない人をいかにケアするか、社会にとって大きな問題ですね。医師と助産師、看護師がいかに妊婦さんを理解してあげられるかとなりますと、技術のみならず患者さんを理解する教育が必要ですね。

遠藤本日、今まであまり知られていないことを皆様にお話しした結果、社会から大きな期待があると感じました。人と人のコミュニケーションができる、生活までみることが出来る、そして産科医療がわかる助産師を目指していきたいと思います。皆様のご意見を真摯に受け止めて努力していきます。今日はいろいろな角度からお話が聞けてとても有意義でした。

中林(座長)本日の内容を整理し、引き続きネットシンポジウムを開催いたします。是非、日本医療学会に入会しシンポジウムに参加してください。今日は本当にありがとうございました。