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シンポジウム:がん終末期の医療体制を考える

開催の様子

新型インフルエンザとは? 東北大学医学系研究科微生物学分野教授 押谷仁

新型インフルエンザとは本来鳥やその他の動物に存在するA型インフルエンザが人から人に効率的に感染するように変化した時に起こる(スライド15)。

そのようなウイルスに対しては人類の大半は免疫を持っていないことになるので、世界規模の爆発的な流行(パンデミック)が起こり莫大な被害が生じる可能性がある。現代の医学ではいったんある程度インフルエンザウイルスが広がってしまうとその拡散を完全に抑えることはできないと考えられている。

新型インフルエンザが起きた時の対策としてはワクチン・抗ウイルス薬(タミフル等)といった医薬品による対策が考えられるが、このような対策にもいろいろな問題があり、絶対的な切り札とはなり得ない(スライド23)。

しかしワクチン・抗ウイルス薬による対策と同時に、学校閉鎖・集会の制限・感染者の自宅隔離・接触者の自宅待機などの公衆衛生上の対策も組み合わせて行なうことでかなりの程度、新型インフルエンザの被害を抑えられることがわかってきている。

しかし日本では早期対応にばかり重点が置かれ、パンデミックが起きた場合の対策が具体的に考えられていない。特にパンデミック期の対策は大きな困難を伴うことが想定されており、事前に十分な計画を策定しておく必要がある。日本でもパンデミック期の対策を含めてより具体的な計画が作成されていくことが求められている(スライド35)。

東京都の新型インフルエンザ対策 東京都福祉保健局 健康安全部感染症危機管理担当部長 月川由紀子

東京都は、新型インフルエンザの脅威に備えるため、平成17年12月に「行動計画」を、さらに、19年3月には都が実施すべき具体的施策を取りまとめた「対応マニュアル」を策定した。

その後、庁内連絡会を設置し、役割分担に基づく訓練の実施、区市町村に対する発熱センター設置の依頼、パンデミック時の治療用の抗インフルエンザ薬を備蓄する等の対策を進めてきており、今年度は感染防護具の備蓄を進めている。

一方、新型インフルエンザ発生時の保健医療体制の確保については、行政だけでなく、すべての医療機関の協力と連携が欠かせない。このため今年度から、都内を10ブロックに分けて、それぞれの地域の医療体制確保について関係機関が同席して対策を検討する協議会を発足させる。協議会では、発熱センターや発熱外来の設置及び運営について、また発生時の院内感染防止対策、医療機関の機能を踏まえた役割分担等について議論し、研修会や訓練も実施する予定である。

東京都は、都内における各主体のパンデミック対策が一層進展することを目指し、事業者団体への働きかけを強めるとともに、区市町村と連携し、都民に対する正しい知識の普及に努め、対策への理解を求めていく所存である。

多数の学生、教職員を抱える大学の問題 早稲田大学総合健康教育センター所長 教授 石堂常世

新型インフルエンザ到来の予兆に対して、大学はビビッドな危機管理対策をたてるべきである。そのことは、多数の学生、教職員をかかえる教育・研究機関として、人的生命の保護ならびに教育・研究活動の機能停止・中止を可能な限り回避する見地から、被害を最小限度にとどめるというリスク管理の上で求められる。

昨年の麻疹(はしか)集団感染は、医療問題であって医療問題に終わらない複合的な全学的危機管理対策のノウハウを教えるものであった。求められるのは、見えない敵ともいえる「新しい感染症」に対して、何を問題にすべきか、どう備えるかの予測・予知・予防の総合的知見と緻密な対策である。

大学という集合体にとって、「感染源を持ち込まない・感染経路を断つ」ための方策の観点から、新型インフルエンザ対策委員会といった学内の危機管理協力体制の確立とフェーズ段階に応じたプランニング(全学的マニュアル作成と学内関連諸部門の意思統一)が要点となるのであり、学内の一医療機関(診療所等)が対応できる問題ではないということである。

そのためには、関連情報の迅速にして継続的な収集と管理、新型インフルエンザの知識と予防策の頻繁な啓発的教育(講演会、学内新聞への記事掲載、リーフレットの配付、オンデマンド映像配信等)、大学閉鎖・休講措置に踏み切らねばならないフェーズ段階の確認と休講措置決定の発令形態、大学機能維持スタッフの就業問題と彼等へのタミフル等の投与措置、パンデミック段階での全構成員との連絡網(インターネット回線、専用電回線)、受け入れ外国人学生、海外留学生や派遣学生、海外渡航者に関して予想される多角的な連絡対応手順、構成員の精神的混乱の回避方法、診療所等の特別緊急体制の整備と医療スタッフの意思統一、官公庁、自治体とくに地元保健所(含発熱外来センター)や公的大規模医療機関との連携網、収束後の速やかな状況復帰対策などである。

本学としては、2007年5月から協議を開始し、可能な範囲で体制を整えてきている。

企業における新型インフルエンザ対策「行動計画をとりまく課題について」 エクソンモービル 医務産業衛生部部長 鈴木英孝

新型インフルエンザに向けた対策については、医療対応という視点から行動計画を構築し始めるのではなく、感染拡大時における企業の事業継続計画(BCP)という視点で仕組みを構築する必要があると考えている。

しかし、多くの日本企業においては国外勤務者への対応を中心に対策を進めるところが多いのが現状であろう。新型インフルエンザ対策の視点が医療対応である限り、満足な対策(行動計画)を構築するのは難しいと感じている。その意味でも横断的な視点と適切なメンバーを動員して、社内で新型インフルエンザ対策を進めることが必要である。

短期間に人材および資金を投入するためにはマネージメントのリーダーシップは不可欠であり、ボトムアップ型ではなくトップダウン型の施策がより適している。新型インフルエンザの全体像を事前に予想することは極めて難しく、前提条件(Assumption)を慎重に検討し、実際の危機に対応できる行動計画を策定する努力を怠ってはいけない。

「みんなで備えよう! 新型インフルエンザ」読売新聞東京本社 編集局科学部次長 長谷川聖治

新型インフルエンザ対策で重要なのは、「(自ら)感染しない、人にはうつさない」という視点です。この視点は、ほかの感染症でも共通ですが、特に新型インフルエンザではどれだけの国民が、この視点を持てるかが、流行を最小限に食い止めるカギを握っていると思います。

そのためにどうしたら良いのでしょうか。一人一人が他人まかせせずに情報をしっかり入手して、それに基づいて適切に行動することです(スライド24)。その意味でメディアの役割は大きいと考えています。

必要な情報とは何なのでしょうか。整理しますと、①新型インフルエンザとは何か(感染力、致死率など)②政府・自治体が準備する対策(ワクチン、薬など)③個人が感染した(可能性を含む)場合どうするか(病院、発熱外来など)④感染を広げないためにできること(自宅待機、食糧備蓄など)⑤その他――――などが挙げられと思います。

新聞では、これまで①の新型インフルエンザの発生源となる鳥インフルエンザが拡大している実態、②の新型インフルエンザ対策行動計画に基づき、国、都道府県レベルで、抗ウイルス薬、プレパンデミック(大流行前)ワクチンの備蓄がどこまで進んでいるかを報道してきました(スライド17)。自分が「うつらない」ための重要な情報だからです。

今、遅れているのは③、④です。海外渡航から帰国し、感染が疑われた場合、居住地区周辺にあるどの病院にいったらよいのかの情報は策定中のところもあり、徹底していません。発熱外来を設ける病院はまだ少ないのが現状です。④の自宅待機、学校閉鎖、集会中止などは感染を広げないために有効な手段ですが、こうした措置を実行する法的な権限を都道府県知事は有していません。こうした措置は、地域コミュニティーと直結していますが、こうした議論は、食糧備蓄(スライド26)などを含め進んでいません。

最後に「うつさない」ための情報をぜひ入手してください。前記の③、④はそれに関連しますが、メディアとしてもこの視点の報道を心がけたいと思います。救急車をまるでタクシー代わりに利用することが問題となっていますが、無駄な病院診察を控え、「うつさない」ための行動をとる努力も大事になってくると思います。