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開催内容

野々木 宏

予防への社会の取り組み

突然死の最大原因である心筋梗塞では、院外で2割ぐらいの方が突然死しています。胸部不快感が発生してから心停止が生じるまで1時間以内がほとんどです。また前触れとなる狭心症が6割ぐらいの方に見られます。早期に受診すれば間に合うことになります。 ところが、実際には心臓発作が起こってから専門病院に受診するまでに直接受信で4時間、医療機関を経てくる場合には12時間かかっています。なぜでしょうか?全国の市民の方に聞いてみました。救急車を利用するという方は1割でした。利用しない理由は、『我慢する、かっこわるい、おおごとになる、迷惑、タクシー代わりに使うという批判、タクシーが早い、自分で受診』などが回答内容でした。救急車を呼ぶことに躊躇する方は、救急安心センターを利用することがお勧めです。これは、モデル事業ですのでまだ全国全ての地域では使用できませんが、すでに稼働しているところでは実際に相談の結果で適切に救急車が利用できているようです。是非地域ごとに実施可能なようにして頂きたい点です。
救急隊と病院とのコンタクトはいまだに電話での1つ1つの病院との交渉であす。受け入れが不能であれば、また同じ作業を繰り返し、時間が過ぎていきます。当然電話で全ての情報を伝えることは困難です。インターネットを用いれば救急車内の全ての情報がデジタル情報として相手先の病院や、他の場所とのデータ共有が即時に可能です。仮想病院として1つの空間を提供でき、搬送の遅れや病院選定の遅れの解消につながります。このシステムは、通常のインターネット利用ですので、病院間ネットワークや診療所との連携にも拡大でき、地域を1つの病院として急性期診療や地域情報ネットワークとして活用できます。 今後の社会の取り組みを期待しています。

三田村 秀雄

AED社会への突入は、他人へのおせっかいを非礼とする古来日本文化への挑戦でもある。街中における心停止からの救命の成否は、目撃者がどこまで協力するかにかかっている。何もしなければもちろん助からないが、119番通報を行い、救急隊の到着を待てば8%の人が助かり、もし救急隊が到着する前に目撃者が心肺蘇生術を開始していれば、その5割増の12%が助かる。さらにAEDが現場で使われれば、何と42.5%が助かることが2007年の調査で報告され、その威力が実証された。たとえ専門性が低くても、市民によるAED使用による救命率は、後からやってくる救急隊員が除細動した場合の救命率をはるかに凌駕し、さらには生存例に限っても市民がAEDを使用した場合の社会復帰率は84%と、救急隊員らによる場合の65%を大幅に上回っている。専門性の高い医師や救急隊員のいない現場において、圧倒的多数を占める市民は、救命のための空間的ならびに時間的ギャップを埋める役割を演じている。しかしながら、目撃された心原性心停止例に対して除細動が試みられた例のうち、現場の市民によるものは5%に過ぎず、AEDが有効に活用されているとは言い難い。
既に20万台近くのAEDが市民用に供されているものの、その分布には大きな地域差がある。AED密度の高い都道府県においてより高い救命率が得られることが確認されているが、未だ価格が30万円近いAED設置の多くは自由意思にまかされており、行政による計画的な設置、財政支援が欠落している。また市民への周知、啓発、教育も、ほとんどが学会や民間ベースでしか行われていない。専門職だけに頼ることに限界のある救命医療において、AEDの出現が国民を臨時救急隊員に仕立て、アウトソーシングとしての役割を期待することになった事実を国が認識し、厚生労働省だけでなく、総務省、文科省、経産省、法務省、国交省、内閣府などが総合して取り組むことが求められている。無資格者が善意・無償で行う手当こそが、心臓突然死を救うためのパラダイムシフトであり、その原動力としてのAEDに敬意を込め、それを有効に活用していくことがわれわれの知恵であり、現代社会に与えられた使命といえよう。

志賀 剛

1心臓突然死(心原性心停止)の直接原因
 8割が心室細動で、2割が徐脈である。心室細動は電気的除細動が可能で、適切に施すことで心拍を元に戻すことができる。

2心原性心停止の原因となる心臓疾患(ハイリスク例)とは
器質的心臓疾患を有するものと有さないものに分けられる。前者には虚血性心疾患(心筋梗塞などの冠動脈疾患)、非虚血性心筋症などがあり、心筋症には拡張型心筋症や肥大型心筋症がある。後者は、“不整脈病(ポックリ病)”といわれるものでQT延長症候群とブルガダ症候群が挙げられる。

3心臓突然死の危険性がある人は発見できるのか
 運動中に心臓突然死を来した人のうち、心臓肥大(肥大型心筋症など)を有していた人が3割以上いる。肥大型心筋症(500人に1人)は心電図で発見できる。また、“不整脈病”のQT延長症候群(5000~10000人に1人)やブルガダ症候群(10000人に1.4人)も心電図に特徴的な所見を呈する。一般に心電図でQT延長を呈する人は1200人に1人、ブルガダ様(類似)所見を呈する人は1000人に1.5人程度認められるといい、スクリーニングとして心電図は有用である。まずは健診で心電図を受けていただくことが重要である。
 心電図はあくまでスクリーニングであり、なにか所見があればさらに専門医の診断が必要となる。そこでリスクのある心筋症であるのか、“不整脈病”であるのかをホルター心電図など精密検査を行ったうえで判断する。

4.心臓突然死を防ぐためには
 まず、健診を受けることが大事である。そこで心電図が“なにか変”であるのかどうかが第一歩になる。また、失神を甘くみない。危険な不整脈が絡むことがある。家族内(3親等以内)に突然亡くなった方がいないかというのも重要な情報となる。
 そして、心臓突然死のリスクがあると判断された場合には、疾患に合わせたライフスタイルの見直しや生活上での注意(飲酒、睡眠、運動、入浴、食事、下痢など)、また必要な方には植込み型除細動器治療が適切に導入されることが心臓突然死予防に繋がるであろう。

安部 治彦

過労死とは、「仕事による過労やストレスが原因の一つとなって脳・心疾患、呼吸器疾患、精神疾患等を発症し、死亡または重度の障害を残すにいたる」ことと定義されている。ストレスには種々の原因があるが、それらの中でも仕事によるストレスの程度は非常に大きく、解雇や仕事上の不適応、転職・配置転換のみならず仕事上での責任の変化から勤務時間や勤務条件の変化、等はその最たるものである。過労による心臓突然死の例をみると、過労死110番への相談件数は、40歳代>50歳代>30歳代の順に多い。一方、2009年総務省消防庁のデータによると、心臓突然死数は全国で63000件とされるが、その内約半数が40歳代・50歳代・60歳代の就労世代に発生していたことが判明している。以上より、過労による心臓突然死の原因として仕事によるストレスが原因と考えられる例は非常に多い。
 一方、心臓突然死の予防として植込み型除細動器(ICD)は科学的にもその有用性が証明されている。国内でICD植込み患者は、ペースメーカ植込み患者に比べて年齢が若く、就労に従事している人が多いのが特徴である。また、ICD治療を受ける患者数は年々増加傾向にあり、2008年度は約6000人であった。しかし、欧米先進諸国に比べると人口100万人当たりの植込み患者数は極端に低い。厚生労働科学研究班(平成16?18年度、主任研究者:安部治彦 産業医科大学)による約2000名弱の国内ICD患者を対象とした就労に関する調査結果では、ICD治療を受けた就労患者の約4割が治療後に辞職・休職に追い込まれ、2割が転職や配置換えになっていた。ICD治療により自動車運転制限や電磁干渉に対する職場環境整備及び安全管理義務、等が労働安全衛生法により雇用者に義務づけされていることがその一因と考えられる。最近、医学的に心臓突然死を来す可能性が高いと考えられる患者であっても、その後の就労に対する不安や自動車運転制限のためICD治療を拒否する患者が少なくないことが全国的にも少なくないことが明らかになっている。医学会のみならず社会的・国家的なサポート体制が必要である。